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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)1325号 判決 1962年10月30日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人沢克己の上告理由第一点の(1)について。

民法二一三条一項にいう分割とは、それによつて所有権の変動を生ずる場合すなわち共有物分割の如き場合をいい、所有関係に何ら変動を生ずることなく単に分筆が行われる場合はこれにあたらないから、本件の如く、共有のまま分筆された各共有地につき全共有者からそれぞれ譲受人に対して所有権の移転がなされた場合には、同条項の適用のないこと所論のとおりであるが、原審が同条項にいう分割の解釈を誤り本件に同条項の適用ありと判示した点は、判文上明らかなように原判決が理由説示として蛇足を附した部分にあたるから、所論は、結局判決に影響を及ぼすことのない点につき法令解釈適用の誤りをいうものであつて、採用できない。

同第一点の(2)について。

民法二一三条二項は、土地の所有者がその土地の一部を譲渡し残存部分をなお保留する場合に生ずる袋地についてのみ適用ありと解すべきではなく、本件の如く、土地の所有者が一筆の土地を分筆のうえ、そのそれぞれを全部同時に数人に譲渡しよつて袋地を生じた場合においても、同条項の趣旨に徴し、袋地の取得者は、右分筆前一筆であつた残余の土地についてのみ囲繞地通行権を有するに過ぎないと解すべきであるとした原審の判断は首肯できる。右と異る所論は採るをえない。

同第二点について。

原判決ならびにその引用にかかる第一審判決は、本件土地を袋地でないとは判示していない。所論は、原判示を正解しないことに基づくものであつて、すでに前提を欠き、採用の限りでない。

同第三点について。

権利濫用をいう上告人の主張を容れなかつた原審の判断は、正当であつて、所論は、独自の見解として採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 横田正俊)

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